トリチウム水どうする 海洋放出反対 タンク保管が多数派だが それ自体現実的か
- 2018/08/31
- 18:08
8月30日、東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法を検討する国の小委員会が国民の意見を聞く初の公聴会を富岡町で開いた。
公聴会では、国が「海洋放出」、「地層注入」「水蒸気放出」「水素放出」「地下埋設」の五つの処分方法の検討状況を説明、公募で選ばれた14人が意見を述べたが、「海洋放出」以外の4つの処分方法については何も議論はなく、14人13人が原子力規制委員会(更田豊志委員長)が実現可能な唯一の方法と吹聴している希釈した上での「海洋放出」に反対、国の選択肢に含まれていない「タンクでの保管」を求める声が相次いだ。
ただ、小委員会の山本一良委員長(名古屋学芸大副学長)は公聴会後、「永久にタンクで保管する選択肢は考えにくい」と処分の必要性を改めて強調した(「タンク保管」求める声相次ぐ トリチウム含む処理水の公聴会 福島民友 18.8.31)。その意味は必ずしもはっきりしないが、「トリチウム水は敷地内のタンクに貯蔵され、現在九十万トン超。今後も年五万~八万トンペースで増える見通しで、東電は敷地内のタンク増設は百三十七万トン分が限界」(トリチウム水放出反対「漁業に打撃」 福島原発めぐり公聴会 東京新聞 18.8.31)としているということかもしれない。
「用地が足りないならば、原発の外に用地を確保するればいいだけだ」という声もあった」(トリチウム水放出反対「結論ありき」不満噴出(核心) 東京新聞 18.8.31 朝刊 2面)。確かに、それならば「タンク増設限界」説に説得力はない。
しかし、「永久にタンクで保管する選択肢は考えにくい」という小委員長説を退けることができるかどうか。というのも、廃炉までの何十年かの間に出る汚染水の量を考えると、タンク貯蔵にもいずれ限界が来ると考えざるを得ないからだ。
チェルノブイリでは原発事故後25年後にも、「一部の廃棄物貯蔵庫と4号炉のタービン建屋ホールで浸水」が続いており、放射能を帯びた水を、少なくとも毎月300トン汲み出して構内に貯蔵しなければならないと言われている(チェルノブイリの遺産 Nature 471 562-565 2011年3月31日号)。「凍土壁」で浸水が減ると期待されたが、凍土癖の効果にも疑問符が付く。
<東電のデータに基づいてロイターが分析したところ、昨年8月に凍土壁が完全凍結して以降も、1日平均141トンの水が流れ込んでいる。これは、それ以前の9カ月の平均値である1日132トンを上回る数値だ。凍土壁は、壁というより、金属のポールを組み合わせた「フェンス」に近いと言える。
国内外の専門家で構成する東電の第三者委員会の委員長であるデール・クライン氏(米原子力規制委員会元委員長)は「凍土壁が過大評価されていた側面がある」と指摘。「福島の現場は水文学(すいもんがく)的に極めて複雑で、特に降水量の多い期間は、実際の水の流れを予測することは難しい」と話す。
クライン氏が言及した水文学(hydrology)は、地上に降った雨や雪などが、地中に浸み込んだり河川に流れたりながら海に集まり、蒸発して大気に戻るまでを地球規模で捉える地球物理学の一部門。地中における水の流れは、把握や予測が難しいとされている。
<台風>
地下水の流入量は、雨に左右されることが多い。東電のデータによると、雨が少ない1月は1日平均83トン。しかし、昨年10月20日─26日の期間では、台風の影響があり、同866トンもの地下水が流れ込む結果となった>(震災7年、福島原発「凍土壁」効果に疑問符 ロイター 18.3.8)。
今から何十年か後、福島もチェルノブイリと同じ難題を抱えているかもしれない。
更田委員長の海洋放出が実現可能な唯一の方法という言葉は、良し悪しを言ってもしょうがない、そうするしかないと言っているだけのことかもしれない。