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イギリス農業者援助 EU型面積支払から環境支払へ 改革CAPの先へ

農業情報研究所18912日より転載

ファイナンシャル・タイムズ紙が伝えるところによると、イギリス政府は2021年から7年をかけ、国の農家への資金供給制度を、農地の規模に基づく現在のEU直接支払=「基礎支払」から環境便益に応じて支払う“環境土地管理スキーム”に置き換える。支払を減額すると同時に、これを農家が提供する環境その他の“公共財”と一層緊密に結びつけるという。

UK to replace EU farm payouts with transition scheme,FT.com,18.9.12

新たなスキームの下では、農家(農場)への支払は、とりわけ大気質・水質、野生生物のハビタットの改善、気候変動防止、歴史的特徴の保護などに基づく。清浄な空気、野生生物ハビタットの保護などの非金銭的成果を金銭的価値で評価するわけだ。

Gove環境相は、現在のEU共通農業政策(CAP)は非効率的で、大規模土地所有者に有利なようにねじ曲がられている、10%の受給者がEU資金の半分を受け取る一方、20%小規模農家はたった2%しか受け取っていないと言う。環境・食料・農村省(Defra)は、農民が提供する公共財の価値を評価するための方法の詳細は未だ提供できていないが、これは2025年までの新たなスキーム開発・試験を経て策定される。2019-20年の直接支払は現在と同じ基準でなされるが、2021年から2027年の支払は農場の土地面積規模と切り離される。年15万ポンド以上の所得がある大規模農場への支払は小規模農場より大幅にカットされる。

環境相言うに、イギリスのEU離脱は、“煩瑣で古臭い”ルール“からの解放の機会を与え、イギリス政府が環境を保護する農家に報いることを可能にする、と言う。

イギリスは、フランスやドイツの大規模農家の抵抗でEUがなし得なかった改革**に向けて大きく踏み出すことになる。ただし、それがイギリスの農業・食料経済にどう影響するか、今後の推移を見守るほかない。

関連情報UK animal exports at risk from no deal Brexit,FT.com,18.9.12

参考図

*EU 共通農業政策(CAP)改革が最終合意 日本農政の盲点を知る,13.10.29

** 農業成長産業化という妄想――「安倍農政」が「ヨーロッパ型」農業から学ぶべきこ  世界 20169月号 206頁を参照。

九二年CAP改革の目標は「十分な数の農業者の維持」、「生産活動・環境保護活動・農村開発という農業者の多面的機能の助長」、「生産の過剰を減らし・環境保護に寄与し・優れた品質の食料品生産を促進するための生産の粗放化を奨励すること」等々と定められた。これらの目標は、直接支払の大半を受け取る大規模農業者(直接支払は基本的には経営面積に応じて支払われる)の抵抗で、現在も実現への道半ばにある。それでも、二〇〇〇年以来相次ぐ改革は、多面的機能を保持する「ヨーロッパ農業」モデルの創出と定着を追い続けている。最新のCAP改革(二〇一四―二〇年のCAP,二〇一三年一〇月合意)は小規模農業者、条件不利地域への援助を増強するとともに、気候と環境に有益な生産方法―有機農業、粗放化(永年草地の維持)、作物の多様化など―を尊重することで面積当たりの追加支払を受けることができる環境支払も設けた。各国は割り当てられた直接支払の三〇%をこれに充てることを義務づけられた」。
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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。

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