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種子法廃止が火をつけた アベノミクス農政に地方が一矢

 農業情報研究所2018年9月30日より転載

20174月、主食となる稲、麦、大豆の種子の生産や普及を都道府県に義務付ける主要農作物種子法(種子法)を廃止する法案が異例の速さで国会を通過、1年後の今年4月から施行された。専ら競争力強化を目指す安倍農政の一帰結である。

 しかし、種子法は各地の環境に最適な種を開発し・農家に提供することで地域農業の生産基盤を支えてきた。種子法廃止による優良種子の安定供給の途絶は、地域農業の安定と存続を脅かす。

 かくて、新潟、兵庫、埼玉の3県が新たな条例を制定したのを皮切りに、地域にとっての農業の役割が大きな、あるいはそれを重視する多くの都道府県が種子法に代わる新たな条例の制定を模索している。中でも長野県などは、種子法の対象外であったソバ、アワなど地域農業に不可欠な種を対象に含める動きもある(注)。種子法廃止が種子法を超える地域農業振興策を生み出すとすれば、「農業及びその関連産業の国際競争力を強化し、国内・国外の競争に勝ち抜くため」(規制改革会議)の種子法廃止が地方・農民の魂に火をつけたことになる。新潟、兵庫、埼玉に続く都道府県、長野に倣い、農協でさえ逆らえない安倍農政に一泡吹かせる。考えるだけでも血が騒ぐ。中でも最大の農業地域、北海道の動きは注目だ。

 (注)農業情報研究所の次の記事参照。
 

  全都道府県が種子関連事業を維持 「なぜ種子法を廃止したのか分からない」  18.3.21

種子法廃止 5道府県が現行種子開発・供給体制を堅持 奢れる国の失政を質す  18.3.20

政府、3国家戦略特区で外国人就農解禁 出稼ぎ外国人の大ぴら酷使に道  18.3.7

新潟・兵庫、長野も県による種子開発・供給体制を堅持 民間参入が至上命題の国も正念場 18.3.6
  
新潟、兵庫が種子法に代わる種子条例 地域に適した種子を県が安定供給 18.2.28

北海道農民連盟は「民間企業だけでなく公的機関が種子を安定して作ることで、生産者が安心して営農できる」と、早くから種子法に代わる独自の条例を制定するよう道に要請していた(種子法に代わる条例制定を要請 道農連 北海道新聞 18.6.6)。煮え切らなかった高橋知事も7月、道議会で「主要農作物の安定生産には優良な種子の供給が不可欠。来年度以降の種子の安定供給へ条例制定に取り組む」と表明した。ただ、道農政部は、国が民間企業参入を促し農業の競争力強化を狙って種子法を廃止したという経緯を踏まえ、「効率性の観点も含め、種子生産をめぐる道と農業団体、生産者などの役割分担をルール化したい」としていたから、条例の内容が種子法を超えるものになると期待することはできなかった(種子法代替条例制定へ 高橋知事「安定生産に不可欠」 北海道新聞 18.7.5)。829日に開かれた道農業・農村振興審議会の主要農産物種子生産部会が示した条例骨子案も、道が引き続き担うのは稲や麦など主要農産物の安定的な種子確保だとしていた。種子法を超える条例はできそうにない。

しかし、9月、道内の農業関係者や市民有志でつくる「北海道たねの会」(久田徳二代表)が、道が新たに制定する条例の骨子案について高橋はるみ知事宛に公開質問状を提出した。質問は《1》稲や麦以外の、ビートやタマネギ、ジャガイモなど道内での生産量の多い品種を条例でどう位置づけるか《2》道内の一部地域のみで栽培されている品種を含め、種子の多様性をどう確保するか《3》種子の開発、生産に関する技術や情報の民間企業への提供を制限するのか―など21項目。9月末までの回答を求めた。道の種子法代替条例骨子案に質問状 市民団体 北海道新聞 18.9.19

同会の独自案は、種子を「人類共通の財産」と位置付け、ジャガイモやタマネギなど幅広い作物の種や在来種を条例の対象に含め、普及体制の整備や保護を図るとした上に、在来種や農家が自ら育てた作物から種を採る「自家採種権」の保護もうたっている(「種守る」北海道民立つ 種子法に代わる条例提案 アべノミクス農政に歯止め「まず地方から」 東京新聞 18.9.30 26面)。種子法を超えて余りある。これが実現するかどうかは分らない。しかし、アベノミクス農政に向けた一矢が放たれたことは間違いない。

関連情報

「たね」がつなぐ人と人、人の自然」(特集 どうなる?食の未来 種子と食べ物の今) 生活と自治 201810月号 6-9

滝川康治著
「種子法」と北海道農業の行方その1(『北方ジャーナル』18年4月号)
「種子法」廃止と北海道農業の行方その2(『北方ジャーナル』18年5月号)
「種子法」廃止と北海道農業の行方その3(『北方ジャーナル」18年6月号)
「種子法」廃止と北海道農業の行方その4(『北方ジャーナル」18年8月号)

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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。

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