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台湾脱原発法の教訓 言うは易く行うは難し(農業情報研究所記事の転載)

  台湾立法院(国会)が111日、2015年までにすべての原発を廃止、電力市場を自由化する電気事業法改正案を採択した。

 

 改正法(以下、「脱原発法」と呼ぶ)は現存のすべての原発の稼働を2025年までに停止せねばならないと定める。また、再生可能電力の流通を優先、再生可能電力生産者を優遇する料金体系を講じるとともにグリーンエネルギーの小規模生産者には予備電力用意の義務を免除する。さらに国営独占電力企業・Taipowerも分割、現在は民間業者が生産する電力もすべてTaipowerを通して販売しなけれなならないが、再生可能電力は2年半以内に発電業者から直接消費者に売ることができるようにする。国営企業は6年から9年の間に民営化、持株会社を立ち上げて発電企業と配電企業に分社するという。

 Lawmakers OK wide-ranging amendments to Electricity Act,China Post,17.1.12

 

 こうした注目すべき台湾の脱原発に向けた動きにも、日本のメディアはほとんど無関心なようだ。私の知る限り、毎日新聞が「台湾の蔡英文政権が2025年までに脱原発を実現するため提案した電気事業法改正案が11日にも立法院(国会)で可決される見通しになった。脱原発が実現すれば、アジアでは初めて。代替の再生可能エネルギーを今後9年間で普及・拡大させられるかが鍵だ」と伝え(台湾:「脱原発法」可決へ 再エネ比率、大幅引き上げ 毎日新聞 17.1.11)、

 

 東京(中日)新聞が、「「二〇二五年までに原発の運転を完全に停止する」。台湾は「原発ゼロ」を法律に明記した。併せて電力事業を段階的に自由化し、再生可能エネルギーへの移行を図る。福島に正しく学んだからだ。これは日本のことではないかと、錯覚に陥りそうになる。あるいは、日本でこそ起こるべきことではないか」(台湾の原発ゼロ 福島に学んで、そして<社説> 17.1.17)と台湾蔡英文政権の英断を称え、再稼動を急ぐばかりのわが国政府に反省を迫るのみである。

 

 私自身も、スイスでさえも2030年までの脱原発をためらう世界にあって、2025年までの原発ゼロを目指すという台湾の決定を歴史的快挙と称えたい。ただ、ここでは、この決定に関して台湾国内で湧き上がる批判と不安の声にも耳を傾けておきたい。こうした声は反発活動家や環境活動家の中から上がったものであり、2025年までの脱原発など本当に可能かと問いかけているからである。

 

 反原発活動家からの批判は、脱原発法は原発稼働停止後に不可欠となる巨額の廃炉(原子炉解体)・使用済み核燃料処理の費用を計算していないということだ。採択された改正法のいくつかの条項は、これら費用を賄う基金に拠出すべきTaipowerの責任を免除しようとしている。そのための資金の不足は既に巨額だが、脱原発法からは新たな資金は何も生まれない、原発解体と核廃棄物処理が解決不能な大問題なるという(Environmentalists urge delay to amendments review,Taipei Times,17.1.12)。

 

 環境活動家からの第二の批判は脱原発法では電力不足のリスクが解決できず、電力供給の不効率の問題が残るかぎり2025年までに原発ゼロの目標は達成できないというものだ。電力供給の不効率とはTaipowerの電力施設メンテナンス能力不足のこと、メンテナンスの間隔が長すぎ、施設はオーバーユース、電力需要ピーク時にメンテナンスを行うこともしばしばだ。その上、新施設や改良施設の建設も遅れ、石炭火力・ガス発電の発電効率の低さは停電の原因ともなっている。しかるに、脱原発法Taipowerの独占的地位を一層高めるだけで、政府のコントロールをますます難しくする。政府は再生可能エネルギー源からの電力供給を20%にまで増やすと言うが、2009年に「再生能源發展條例」が成立したものの、総電力供給に占める割合は未だ4%にすぎない(Taipower’s inefficiency root of power problems: group,Taipei Times,17.1.17 )。

 

 これは脱原発の目標そのものを批判するものではないが、脱原発は「言うは易く行うは難し」と思い知らしめる。台湾の脱原発法は、日本の脱・反原発派を感服させるだけでなく、脱原発のためには何が必要か―もちろん再生可能エネルギーだけではない―を教えている。

 

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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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