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浪江町山林火災、放射性物質の「大規模飛散はない」? 林野庁調査結果は何を語る?

農業情報研究所(2017614日)から転載  

 

 農水省が23日、429日に福島県浪江町の帰還困難区域内十万山国有林で発生した「林野火災の跡地における空間線量率等」の実態調査の結果を発表した。

 

 福島県浪江町・双葉町国有林火災跡地の実態調査の結果について

 

 これについて、福島民友紙は24日付の記事で、

 

 「東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域となっている浪江町と双葉町にまたがる十万山で4月に発生した山林火災で、林野庁は23日、山林の実態調査結果を公表した。同庁の担当者は「火災による放射性物質の大規模な飛散はないと考えられる」と説明、放射性セシウムが山林から渓流などに流出する可能性も低いとした。

 大規模な飛散がないとの理由について、同庁は〈1〉延焼区域内や区域外などで空間放射線量に明確な差が見られない〈2〉現場周辺に設置された県の放射線監視装置(モニタリングポスト)の測定でも明確な変動が確認されていない―ことを挙げた」と伝えている。

  

 放射性物質「大規模な飛散はない」 浪江の山林火災で林野庁 福島民友 17.6.24 

  

 ただ、林野庁が「大規模な飛散がない」と言っているわけではない(少なくとも報道発表文書を見るかぎり)。

  

 「今回の調査では、燃焼箇所及び非燃焼箇所で空間線量率に明確な差は見られなかったこと、土壌等とともに放射性物質が流出する可能性は低いと考えられることがわかりました」と言っているだけである

  

実際、空間線量率を調べたのは「燃焼区域」と「非延焼区域」の境界線を挟んで隣接する19ヵ所の地点においてだけであり、境界線から離れた「非延焼区域」の地点では全く調査されていない(参照:福島県浪江町・双葉町国有林火災跡地における空間線量率等の実態調査結果)。

 

境界線から離れた山林内地点、中でも生活圏に近い地点への「大規模飛散」がなければ結構だが、今回の調査ではそれは確認できない。燃焼箇所のすぐ隣に飛んでいなければそれより遠くには飛んでいないとは決して言えないからだ。調査の第一の目的が立ち上る煙に含まれるであろう放射性物質がどこまで飛び、どこに落ちたのか(さもなければ濃度を薄めてどこかを浮遊しているのか)を知ることにあるとすれば、調査の設計自体が間違っていることになる。

  

福島県が発表する「県内各市町村 環境放射能測定結果」では、少なくとも測定地点における空間線量率が火災前後で大きく変わっていないことは確認できるが、測定地点には空白が多すぎる。だから林野庁の調査に期待したのだが、期待は裏切られた。青森、島根、松山や他府県の汚染は論外としても*、これでは「葉物野菜降りかかった放射能のチリを洗い落して、危険度の高い内部被曝を防ぐことが重要になります」(浪江町山林火災 「青森から島根、松山まで汚染」は本当か 時評日日 17.6.6参照)などといった「風評」も払拭できないだろう。残念なことである。

 

なお、林野庁報道発表が「土壌や落葉層等とともに放射性物質が流出する可能性は低い」としながらも全否定することなく、「今後とも、関係機関とも協力して、土壌流出の兆候や植生回復の状況等を把握していきます」としていることに注意しておきたい。

*たとえば栃木県各地の空間線量率は火災前後でほとんど変わっていない。

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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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