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G20首脳会議 保護主義対抗で二国間・地域貿易協定を称揚 日欧EPAも正当化

農業情報研究所 2017年7月9日から転載

  マスコミは、ハンブルグG20サミットが保護主義への対抗で一致する一方で、不公正な貿易相手国に対する制裁措置の発動を容認、保護主義的な姿勢を強めるトランプ米政権に譲歩したと騒いでいる。   

 G20首脳宣言「保護主義と闘う」明記 対抗措置も容認 日本経済新聞 17.7.9

 不公正な貿易相手国に対する制裁措置」はアンチ・ダンピンピングAnti-dumping (Article VI of GATT 1994))、補助金相殺措置(Subsidies and Countervailing Measures)などWTO公認の不公正貿易対抗措置である。その発動を容認すること自体は保護主義でもなんでもない。それにもかかわらず「不公正な貿易相手国に対する制裁措置の発動を容認」を宣言の柱としてを取り上げるのは、この文言がトランプ政権が考えている国家安全保障上の理由に基づく輸入制限の正当化を示唆していると考えるからだろう。

 しかし、それならそうとはっきり言えばいい、またそう言うべきである。さもないと、、「不公正な貿易相手国に対する制裁措置」自体が非合法な「保護主義的」措置であることになってしまう。何が「保護主義」かをめぐる議論を混乱させるだけである。

 だが、ハンブルグG20サミット宣言(G20 Leaders´ Declaration Shaping an interconnected worldには、新聞報道が取り上げなないもっと重大な問題がある宣言の貿易・投資に関係する部分を引用すると、次の通りだ。

 「国際貿易及び投資は経済成長、生産性、革新、雇用創出、開発の重要なエンジンである。我々は互恵的な貿易と投資のフレームワーク及び無差別原則の重要性に留意して市場を開かれた状態に保ち、またすべての不公正貿易慣行を含む保護主義と闘い続け、この観点からして合法的な貿易防衛手段の役割を認める。我々は、特に貿易・投資に有利な環境を奨励することによって平等な競争の場の確保に努力する。さらに、予見可能で互恵的な貿易関係にとっての透明性の重要性を再確認する。・・・

 我々は国際貿易・投資のベネフィットが十分に多くの人々の間で共有されてこなかったことを認める。我々は人々が経済グローバリゼーションの機会と便益を享受できるようにする必要がある。我々は貿易・投資自由化と技術変化のコストを調整する影響緩和と適切な国内政策に関する経験を交換すること、また包摂的で持続的な世界の成長に向けた国際協力を強化することに合意する。我々は、ルールに基づく国際貿易システムの決定的に重要な役割を強調する。我々は、開放的で、透明で、包摂的で、WTOに整合する二国間・地域・多数国間協定の重要性に注目し、それが多角的貿易協定を補完するように努力することを約束する。我々は、WTO貿易円滑化協定の発効を歓迎し、途上国に対する技術支援を含む完全実施を要請する。我々は、すべてのWTO加盟国と共に、第11WTO閣僚会合の成功させるように努めると約束する。・・・.」(以上、宣言からの部分的引用)

 WTOの無差別原則に基づく互恵的な貿易システムを守ることの重要性が説かれている。不公正貿易に対する対抗措置もそのようなシステムの一環だ。それがなければ、このシステム自体が崩壊してしまう。このシステムの崩壊を防ぐためには貿易自由化・グローバリゼーションの人々への破滅的影響を緩和し・救済する国内対策も必要だ(例えば、欧州委 グローバル化で解雇の多数労働者を助ける資金を支払い 農業情報研究 07/12/21)。「不公正貿易に対する対抗措置」に関する妙な先入観がなければ、ここに言われていることに何の違和感もない。

 ところが、そんなWTO多角的貿易体制礼賛の言葉のなかに、本質的に差別的・排他的(開放的でも包摂的でもない)である故にWTOが原則として認めない二国間・地域・多数国間協定」が重要などという言葉がさりげなくはさみこまれている。それこそが問題、新聞が取り上げるべき問題である。

 二国間・地域・多数国間協定も「開放的で、透明で、包摂的で、WTOに整合する」とGATTWTOが認めれば、「多角的貿易協定を補完する」と言えなくもない。しかし、簇生する二国間・地域協定がそんな基準を満たすかどうか、GATTWTOの審査は加盟国間の政治的対立により久しくストップしたままである。

それをいいことに弱肉強食、ダーウィン主義の二国間・地域協定(ダーウィン主義のTPP 何が「力による支配ではなく」、「自由と民主主義」だ 農業情報研究 13.3.19)に先陣を切って突き進んできたEUと日本が、トランプ騒動のどさくさに紛れてこんな言葉を宣言に忍びこませたに違いない。この機会に多くの農民が反対する日欧EPAを正当化してしまおうという思惑も見え見えだ。

日欧EPA反対?G20 の国際約束に背くなどできるはずがない!―安倍晋三、マルムストローム



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Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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