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マスコミがヒアリの恐怖を煽り、殺虫剤で天敵皆殺し 現時点での駆除は逆効果

 「ヒアリ」が連日マスコミを賑わしています。中には「強毒ヒアリ」とか「殺人ヒアリ」など、無責任に恐怖を煽りたてる報道もあります。おかげで、ヒアリを殺すための殺虫剤需要が急増しているそうです。殺虫剤メーカー「フマキラー」は環境省や神戸市などに無償で殺虫剤を提供、「ヒアリは殺虫剤に特に強くなく、通常のアリ用殺虫剤でも効果が期待できる」と殺虫剤を売り込んでいる。アース製薬も、6月後半のアリの殺虫剤の出荷量が関西エリアを中心に前年同期比で倍増し、7月に入って関東でも同様の傾向といい、広報担当者は「夏休みが近づいてきて、小さな子どもが公園の砂場などで遊ぶのを心配する保護者が増えているのでは」とみているといいます(ヒアリ、駆除できるか 数カ月で巣作り 殺虫剤は効果 朝日新聞 17.7.10)。

 恐ろしいことです。それではヒアリの天敵も皆殺し、ヒアリの国内定着を助けるばかりか、殺虫剤に触れる子どもたちの健康被害さえ招きかねません。マスコミはヒアリの恐怖を煽るのはやめ、ヒアリに関する正しい知識の普及に努め、特に殺虫剤使用については直ちに警告を発すべきです。「正しい知識」とは?国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)のホームページをご覧下さい(「ヒアリに関するFAQ」)。その現時点ではアリ駆除は逆効果にはこう書いてあります。

「いま「殺人アリ」パニックでアリ駆除剤が売れているそうです。アリがいると不安になる気持ちはわかります。しかし今現在、コンテナやその中身が置かれていた場所周辺以外ではヒアリはまだ見つかっていません。そこで見つかるのはほとんどが巣からはぐれた働きアリと思われます。いいかえるなら、港湾のコンテナ置き場以外では野外巣はまだ確認されていないのです。 

よって一般市民の皆さんが今駆除しているのは100%ヒアリではないと断言していいでしょう。これはヒアリ対策上由々しき問題です。理由はつぎのとおりです。

実はヒアリの侵略から私たちを守ってくれる「仲間」がいます。それは日本のアリやクモなどの他の捕食者たちです。ヒアリの働きアリは小さい割には屈強ですが、逆に翅アリ(新女王)は大きい割に虚弱です  - これは他のほぼ全てアリ種でいえます。一般に、結婚飛行を終えたアリの新女王は、地面に降り立つとすぐ巣作りを始めますが、十中八九失敗します。なぜなら他の生物に邪魔されるからです。最大の邪魔者はアリ自身です。翅アリが降り立った地面が、もし他種のたとえば日本在来のアリの「領土」だったら、たちまち地主の働きアリに見つかって殺されてしまいます。実際、このシナリオがヒアリにおいてもあてはまることがフロリダで行われた最近の野外研究で明らかになりました(文献16)。地元在住のさまざまなアリたちの存在はヒアリの防御壁になりますが、殺虫剤や耕耘機であらかじめ在住アリを除去しておくと、ヒアリの新女王による新巣定着率が格段に上がったのです。・・・」

今日の琉球新報も、「多少の外来種の侵入は在来種が阻止してくれる。むやみにアリを恐れ殺すのではなく、沖縄の生態系を維持することが重要だ」という沖縄科学技術大学院大学(OIST)の吉村正志研究員の警告と伝えています(「在来種、殺虫剤で殺さないで」 ヒアリ対策で専門家呼び掛け 琉球新報 17.7.18)。吉村研究員はヒアリが万が一県内に侵入した場合、農作業や畜産業に支障が出るほか、観光地としてのイメージダウンにつながることから観光業にまで影響が及ぶ可能性があると推測しているそうです。

中央各紙、テレビも、何故これを伝えないのか。明日からでも、声を大にしてこれを伝えるべきです。
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Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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