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リニア南アルプストンネル長野工区掘削開始 事業失敗を隠すセレモニー?大鹿村からの報告

農業情報研究所2017721日)より転載

JR東海が2027年に開通を目指す「夢」のリニア中央新幹線」(リニア)、最高時速500キロという超高速で東京・品川駅から愛知・名古屋駅までの286㎞を40分で結ぶ。さらに37年には大阪・新大阪駅まで延伸、438㎞を67分で結ぶという。

しかし、総工費9兆円もの大事業、JR東海の自己資金での実現は疑わしい。そこでリニアと新幹線(北海道、北陸)で「大阪や東京が大きなハブとなって、北から南まで、地方と地方をつないでいく。『地方創生回廊』を創り上げ、全国を一つの経済圏に統合することで、地方に成長のチャンスを生み出してまいります」(20161月、第190国会施政方針演説)などとぶち上げていた安倍総理が助け舟、財政投融資を活用して品川-名古屋間の建設に3兆円を投入することで名古屋-大阪間の竣工を最大8年前倒しして37年には開通できると発表した(昨年61日)。

これで関西各地のリニア誘致合戦に火がついた。「四条河原町で「リニア誘致」などPR 京都市出身のモデル、泉里香さんら(産経ニュース 17.7.15)などと浮かれている。しかし、南アルプスのリニアトンネル掘削現場の実情を知れば、そんな彼らの浮かれ気分も吹き飛ぶだろう。

新聞は、「JR東海は(七月)三日、リニア中央新幹線計画で、最難関工事とされる南アルプストンネルの長野工区を掘り進めるため、大鹿村上蔵(わぞ)の作業用トンネル坑口「小渋川非常口」で掘削を始めた」と伝える(小渋川非常口の掘削始まる リニア長野工区(長野) 中日新聞 17.7.4)。しかし、「記者といっしょに南アルプストンネルの掘削地を見に行った」大鹿村住民が伝えるリニア中央新幹線・南アルプストンネル着手のせこすぎる現実(東京ブレイキングニュース 17.7.20)はこのようなものだ。

現場は伊那谷を流れる天竜川から車で30分の大鹿村中心部から、さらに15分。釜沢という集落の、川を挟んで対岸、除山という山の麓である。川沿いのアクセス道はJR東海がゲートを設けて接近できなくしていたため、スーツ姿の記者といっしょに集落の外れの林道から急斜面を下ること10分。川岸に下り立ち対岸を見ると、たしかにトンネルの入り口が見えた。しかし周囲に人影はまばら。フェンスで覆われたトンネルの前には重機が置かれていたものの、掘っている気配はない。周辺では防音壁をのんびり作業員が一枚一枚並べているし、完成した建物はない。あくまでもセレモニーとして掘削の体裁を整えたのが見え見えだった。

 実のところ、JR東海の現場の社員は焦っているように見える。南アルプストンネルの工事着工は当初2015年秋に予定されていたのだが、起工式は1年遅れの2016年11月。その間着工予定が、「今冬中」「夏までには」「10月には」とコロコロ変わっていた。さらに南アルプストンネルの当初の掘削現場はここではなく、釜沢の一つ手前の集落の小渋川という川近くに予定されていた。

 ところがこの現場の林は保安林に指定されていた。もともと土砂災害防止のために伐採を禁止されている場所のため、指定を解除するには時間がかかる。JR東海は解除予定を見込んで昨年11月に起工式を急いだようだが、実際には国の審査が長引き、その上住民が森林法に基づく異議意見書を提出したため、解除の目途がまだ経っていない。しかたなく、二番目に掘削予定だった先ほどの除山の現場を先に掘削したのが実態だった。したがって、トンネル以外のヤードや排出土の置き場の整備が追いついていないのだ。

 実のところ、すでに10年後の2027年の開業には黄色信号がともっている。これ以上の掘削の遅れは事業の失敗を対外的に印象付けかねないので、ゴールデンウィーク前に駆け込みで掘削をリリースしたとしか思えない。JR東海は翌日、南アルプストンネルの掘削に新型の掘削マシーンを投入することを、名古屋にある中日新聞にリリースして記事にさせている。実績のないマシーンは、福島第一原発の格納容器に入っていく新型マシーンとどの程度違うのだろう。かえってJR東海の焦りを感じさせる報道だった。

 実際には、釜沢地区に行くまでの道は谷沿いの一本道で、掘削機が通行するための道路拡幅は終わっていないし、排出される残土は、大鹿村だけで300万㎥あるとされるが、長野県内でその残土の置き場が確定した場所は一カ所もない。その上、村内の関連工事個所にはほかにも保安林がかかっていたり、河川法による規制がかかっていたりする。さらにもう一カ所の掘削予定地も、橋梁の準備が整わず1年遅れる予定だ。

 現場ののんびりした様子を見て、メディアにすら現場を公開しなかったのは、準備の遅れがかえってばれると思ったからではないかと勘ぐった。他人事ながらこれで本当に大丈夫か。

 翌日、別のメディアといっしょに現場を再度見に行った。昼休みで作業が休みなので1時半まで待ったが、結局作業が再開しないので諦めて引きあげた」。

我々が生きている間、安倍総理の目が黒い間に、「夢」はとても実現されそうにない。それにもかかわらず、トンネル出入り口が位置する地方の住民の生活は、何世代にもわたり押し潰され(農業情報研究所:大鹿村 リニア工事開始に同意 国・中央に蹂躙され、分裂・瓦解に向かう沿線地域コミュニティー,16.10.22「地方創生回廊」は「地方葬送回廊」 リニア中央新幹線に踏み潰される大鹿村,16.10.15)、「失ったら二度と取り戻せない清らかな水、自然環境、生態系」が失われることになるのである。浮かれ人間、浮かれるのをやめるだけでは足りない、今すぐ“NO! リニア”と声を上げるべきある。さもないと手遅れになる。

関連情報:農業情報研究所:NO!リニア中央新幹線

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Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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