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殺虫剤売り上げ急増 オリパラの頃には都内もヒアリ天国?小池さん、ラジオ体操どころではありません

今朝のNHK首都圏ニュース(745分頃から)、大井ふ頭で「強い毒性」を持ち、刺されると時に「死に至る」こともあるヒアリが確認されたことを受けて、品川区にあるホームセンターはアリを対象とした殺虫剤の売り場を増やした。この店舗では、アリ用の殺虫剤の売り上げが今月10日からの1週間で去年の同じ時期より10倍以上になったほか、グループ全体でも例年の2倍近くに上っている。ホームセンターの店長は「当初は業務用での購入が多かったが、最近では一般の人の購入も増えている」と話し、訪れた客は「子どもが夏休みに入ったばかりなので、しっかり対策をとりたい」と話していたなどと報じていました。

 実はこのニュース、2 日ほど前のNHK WEB NEWが報じていたのと全く同一内容のニュースです(ヒアリ発見相次ぎ 殺虫剤の販売急増 メーカーは増産 17.7.23 2015分)。

 このニュースはその末尾で、「ヒアリへの対策について、環境省は「むやみに殺虫剤を使うと在来種のアリを減らし、ヒアリが侵入しやすくなるおそれもある」と指摘していて、ヒアリのようなアリを見つけたら、触ったり、自分で駆除したりせず、環境省や自治体などに通報するよう呼びかけています」と注意を喚起していました。

ところが、夜10時過ぎのニュースよりも視聴者がはるかに多いと思われる今朝のニュースでは、こんな注意事項があることなどには全く触れていませんでした。ホームセンター店長や「訪れた客」ともども、ヒアリの国内定着を助けるがごときです。NHK、最強の公器は、少なくともこの件に関しては無知な消費者の啓蒙のためにこそ使うべきです。このニュースの見出し、「殺虫剤売り上げ急増、ヒアリと闘う在来アリ絶滅の恐れ」と改めるべきでしょう。さもないと、東京オリンピックのころにはヒアリはすっかり都内各所に定着してしまっている恐れがあります。テロとの戦い?ヒアリを都内にばらまき、定着させるのも立派なテロです。小池さん、ラジオ体操で浮かれている場合ではない。都としてもアリ退治の殺虫剤多用に警告を発すべきときです。ホームセンターやドラッグストアの殺虫剤売り場には、下のような警告文の貼り出しを義務付けるべきです。



現時点ではアリ駆除は逆効果

いま「殺人アリ」パニックでアリ駆除剤が売れているそうです。アリがいると不安になる気持ちはわかります。しかし今現在、コンテナやその中身が置かれていた場所周辺以外ではヒアリはまだ見つかっていません。そこで見つかるのはほとんどが巣からはぐれた働きアリと思われます。いいかえるなら、港湾のコンテナ置き場以外では野外巣はまだ確認されていないのです。 

よって一般市民の皆さんが今駆除しているのは100%ヒアリではないと断言していいでしょう。これはヒアリ対策上由々しき問題です。理由はつぎのとおりです。

 実はヒアリの侵略から私たちを守ってくれる「仲間」がいます。それは日本のアリやクモなどの他の捕食者たちです。ヒアリの働きアリは小さい割には屈強ですが、逆に翅アリ(新女王)は大きい割に虚弱です  - これは他のほぼ全てアリ種でいえます。一般に、結婚飛行を終えたアリの新女王は、地面に降り立つとすぐ巣作りを始めますが、十中八九失敗します。なぜなら他の生物に邪魔されるからです。最大の邪魔者はアリ自身です。翅アリが降り立った地面が、もし他種のたとえば日本在来のアリの「領土」だったら、たちまち地主の働きアリに見つかって殺されてしまいます。実際、このシナリオがヒアリにおいてもあてはまることがフロリダで行われた最近の野外研究で明らかになりました(文献16)。地元在住のさまざまなアリたちの存在はヒアリの防御壁になりますが、殺虫剤や耕耘機であらかじめ在住アリを除去しておくと、ヒアリの新女王による新巣定着率が格段に上がったのです。

ここから少し勉強しましょう。これから皆さんの住んでいる地域へヒアリが侵入してくるとしたら、その経路は2つあり得ます。

(1)資材に潜んで運搬されたヒアリが巣ごと引っ越しをして定着する。

(2)翅アリがどこらからか飛来し新たに巣を作る。

国内定着が確認されていない現在、(1)の可能性があるのはヒアリに汚染された輸入資材が置かれていた港湾部などの場所、そしてそのごく周辺のアリが歩いて移動できるせいぜい数10メートルの範囲でしょう。それ以外の場所、すなわち皆さんの住んでいるほとんどの場所では、今後ヒアリが侵入してくるとしたら、それは(2) - すべて翅アリの飛来から始まります。もう理解されたかと思いますが、そんな場所でいま住んでいるアリたちを闇雲に駆除すると、飛来したヒアリの新女王の巣づくりに絶好な『アリなし空間』を作ってしまいます。アリ駆除はヒアリの蔓延を助けてしまう懸念があるのです。

アリを過度に怖がる必要はありません。在来のアリはヒアリと戦う友です。在来のアリを活かして、ヒアリの新女王の定着を妨げましょう。

国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)


 




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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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