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メコン川渇水

渇くメコン川 中国支配の懸念 日本経済新聞 19.9.7
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・アイラー米スティムソン・センター・ディレクター A・ザルツバーグ米ノースカロライナ大学チャペルヒル校ディレクター

メコン川は、中国からラオス、タイなどを通ってベトナムから海へ流れ込む。現在、渇水の危機にひんしており、特に中国以外の流域国は直ちに行動する必要がある。行動しなければ、上流の水加減をコントロールできる中国が、川全体を支配する危険がある。

最近数カ月、メコン川の多くで、水位が歴史的な水準にまで低下したとされる。主要流域国のタイでは7月、北東部の灌漑(かんがい)施設が川から水をくみ上げられなくなり、軍隊が出動したようだ。タイやラオスで移動できなくなった魚の写真がソーシャルメディアで拡散、責任のなすり合いも起きたという。

米国のポンペオ国務長官は7月、「メコンの渇水は、上流の水を止めるという中国の決定から来た問題だ」と中国をけん制した。中国の王毅外相は「下流へ大量の放水をした」と反論した。どちらも、大国が、水を政治的手段として利用する意図があることを示す。

タイの渇水のきっかけの一つは、上流に位置する中国の景洪ダムが7月中旬、放水量を制限したことだった。ただ放水制限は中国だけの問題というより、流域国が、水資源の管理に関する地域全体の計画に合意できないことを映している。

ラオスをはじめとする流域国のダムの完成により、魚は取れなくなり、農作物の生産にも影響が及ぶ。ラオスだけで2030年までに約150のダム新設が計画されており、流域はさらに寸断されることになる。

中国からの放流を増やせば、下流域への影響を軽減できるかもしれないが、雨不足とインフラ増設を完全に補完することはできないだろう。様々な圧力の組み合わせが、メコン川を窒息させつつある。

中国は15年に立ち上げた枠組みである「瀾滄江―メコン川協力(LMC)」を通じ、渇水の影響を緩和するためのインフラ計画やメコン川の将来ビジョンを提案する。渇水の影響の緩和は歓迎されるが、中国主導の計画により、流域の経済が壊されてしまう危険がある。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の流域国で構成するメコン川委員会(MRC)によると、毎年雨期の時期に起きる川の氾濫は80億ドル(約8400億円)から100億ドルの経済的利益をもたらす。一方、(ケタは違うものの)被害も7千万ドルにのぼるという。

言い換えれば、メコン川の自然の流れは、川と流域の従来のかたちでの存続を保証するためには必要不可欠なのだ。中国にメコン川を任せれば、1995年に発足し、地域開発を支援してきたMRCの形骸化にもつながりかねない。

米国や日本、欧州連合(EU)、オーストラリアなどは支援を強化しようとしているようだ。米国主導の枠組み「メコン川下流域開発」の一環として、渇水や氾濫の予測などを改善するため、リアルタイムでデータにアクセスできるようになる構想が進む。

ASEAN流域国は、こうした提案に関わるとともに、将来の川の管理を中国に譲らないことを保証する必要がある。中国に水流とダム運営上のデータを提出するよう圧力をかける必要は、さらに差し迫っている。流域国は、刻々と変化する水の流れに対応する計画を立てることが可能になる。中国はデータを提供することにより、誠実な姿勢を示すことができるだろう。

ASEAN流域国は、メコン川を政治的に利用しようとする動きを押し戻し、川の管理を自分たちの手に取り戻す必要がある。地域全体の水が確保される将来は、協力を深めることにより約束される。

 

関連英文はNikkei Asian Reviewサイト(https://asia.nikkei.com)
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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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