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青森中学生いじめ自殺調査 原因は多様と迷宮入り?米国のミツバチ大量死調査と同然だ

農業情報研究所<2017828日)から転載

昨年8月に青森県内で、2人の中学生がそれぞれ、いじめ被害を訴えて自殺してから1年がたった。

8月19日には東北町上北中の男子生徒(1年)はいじめ被害を示唆する遺書のようなメモを残して自殺した。12月にまとまった町いじめ防止対策審議会の調査報告書は、男子生徒に対する校内でのいじめを認めたものの、自殺に至ったのはいじめのほか、小規模の小学校から人数の多い中学校へ進学したストレス、思春期の影響などの複数の要因があると結論付けた。男子生徒の母は「本人が自殺の一番の原因はいじめだと書き残している。この一言では、駄目ですか。息子が残したメモを、遺書として扱ってほしい」と調査への思いを吐露したそうである。
 8月25日に自殺した青森市浪岡中2年の葛西りまさんについては、自殺から4カ月後の昨年12月、市いじめ防止対策審議会は葛西さんへのいじめを認定した。しかし、今年3月に調査報告書案を遺族に
説明した際、葛西さんが思春期特有の鬱(うつ)だった可能性があるとの記載について具体的な根拠を示せなかった。不信感を持った遺族は翌4月、内容の一部再検討や一部委員の解任を要望した。審議会や市教委は応じず、5月末には「(自殺には)いじめ以外の要因がないと断言できる情報を得られなかった」、自殺には「いじめを含むさまざまな要因が関わった」と言い残して審議会の全委員が任期満了によって退任してしまった。
 宙に浮いた報告書案は、顔触れを一新する審議会の資料になる。新たな委員は全国規模の職能団体からの選出が決まり、現在も選任作業が続く。父親の剛さんは「いじめさえなかったら娘は亡くなっていないという家族の気持ちを、正面から受け止めてもらえていない。曖昧な調査結果からは曖昧な再発防止策しか生まれない」と語ったそうである。

青森中学生いじめ自殺1年 遺族の不信感強く 河北新報 17.8.28

 この話を聞いて、分野は全然違うが、似たような話を思い出した。200607年に全米の養蜂業者を震撼させた冬季のミツバチコロニー崩壊(蜂群崩壊症候群、CCD)に関する話だ。米国農務省は早速CCDの原因調査に乗り出した。USDAの研究者は、CCD感染養蜂場の蜜蠟や花粉に高レベルの病原体と殺虫剤が存在することを発見した。しかし、これは非感染養蜂場でも同様だった(そうである)。加えて、最も有力な原因ではないかと疑われていた寄生虫・ミツバチヘギイタダニ(Varroa mites)も、それだけで問題を十分に説明できるほどのレベルでは見つからなかった。かくて、CCDの原因は未だに解っていない。USDAは、CCDは多くの異なる要因が相乗的に作用して起こる症候群であろうと、結局、問題を迷宮入りさせてしまった。当然ながら、CCD予防対策も未だにできていない。

 CCDに象徴されるミツバチや多くの食料生産が依存する授粉(送粉)動物(ポリネーター)の世界的退潮(傾向)については、病気、気候変動、ハビタットの破壊、農薬(特にネオニコチノイド殺虫剤)使用などさまざまな要因が指摘されてきた。しかし、そのどれがどの程度この退潮に関与しているか、その解明は困難を極めている。だからといって、この退潮に対して、米国のように何もしないでいるは間違いだろう。1990年代半ば(ネオニコチノイドが開発され・普及し始めたときに符合する)以来、フランス南部ではミツバチ大量死が相次いだ。当時、ナタネやトウモロコシの種子被覆に使われるようになったネオニコチノイドであるフィプロニルやイミダクロプリドがその元凶ではないかと疑われた。ミツバチが大量に集まるナタネの花を通して(のみ)ネオニコチノイドに暴露されているのではないか、不完全な当時の科学的知識に基づき、フランス政府は1999年、ネタネの種子処理へのこれら殺虫剤の使用を禁止した(風媒植物であるトウモロコシには許された)。科学的確証がないからと言って、目の前のミツバチ大量死を座視するわけにはいかない。少しで疑われる要因は即座に取り除く。「予防原則」に基づくフランス流の措置であった。それは2000年代前半以降、科学的知見が増えるに応じて、特定作物や特定の用法に限定したネオニコチノイド使用の部分的モラトリアムの拡張されてきた。フランス、ヨーロッパは、そうすることで、高まるポリネーター・環境・人間の健康保護の社会的要請に応えきたのである。

 自殺にはいじめ以外の要因も絡んでいるかもしれない。どういう要因がどれだけ関係しているのか、そんなことは亡くなった本人にしか分らない。私も小学生時代、自殺も思い立ったいじめられっ子だった。戦時中、父親は徴用されて九州小倉の軍需工場で働いていた。戦争が終わり、ちょうど1年生になるときに、父が生まれた信州の村に引き揚げた。当時の村の子どもたちは、学校に行くときにも未だ着物姿だった。そこに、夏には半ズボンでやってくる風変りな奴がやってきた。同年の隣家の息子はガキ大将、半ズボンの裾から覗き込み、事あるごとにからかい、その執拗さに怒ると、みんなで”怒った、怒った」と囃し立て、挙句、クラスで一番大きな男の子をけしかけて私を組み伏せる。田舎教師(今でも名前は覚えているが、いまさら言わない)は、それを見てもても決して「いじめ」とは受けとめなかった。

子どもらしい他愛のない「いたずら」か「遊び」と思っていた。時に反撃を食った子どもが、あいつがやったと親たちや教師に訴える。私は短気ですぐ怒る”きちがい”にされてしまった。父親も近所への手前、私を怒って見せる。どこにも行き場がなくなり、学校を飛び出して梅雨時の荒れ狂う天竜川に身を投げようとした。これも羽交い絞めで止められ、挙句、いいかげんせよと怒鳴られた。

 こんな私の経験からすれば、「いじめ」が自殺の主因だったかどうかの議論などどうでもいい。ただちにいじめ防止に取り組むべきだ。全力をあげて。いじめた子どもたち、親や教師や関係者に反省を求めるとともに、亡くなった生徒たちの冥福を心から祈る。ネオニコチノイドのために命を命を落とした無数のポリネーターたちの冥福も。

 *ネオニコチノイドのハチに対する影響については最近、二つの画期的研究が現れた。ネオニコチノイドのハチの健康に対する影響を現実の農場とその周辺環境で調べた大規模なフィールドワークである。各種のハチのネオニコチノイドへの暴露がその生殖能力(女王蜂生産、産卵数)を低下させ、働きバチの死亡率を高め、その衛生行動(巣房中の病気の子を見つけ、巣から引きずり出す)を減らし、越冬能力を奪うなどの事実が確認されたが、最も重要な発見は、ハチのネオニコチノイド暴露の主要経路が、種子処理を受けた作物ではなく、周辺植物の花粉であるということだ。すなわち、ハチたちは、農場に今直接に施用されるネオニコチノイドよりも、以前に農業用に利用されたものが環境中に残存していて、植物体内、その溢液、汚染水中に出現したネオニコチノイドから大きな影響を受けている。これが意味するところは、ネオニコチノイド使用の規制(部分的禁止)は、ポリネーター保護の観点からする限りは無意味であることを示唆している。それは使い続けるかぎり環境中に拡散して残存、ポリネーターと人の健康を脅かし続ける。いかなる「使用規制」もなく、散布する場合にはハチの活動時間を避ける、巣箱の退避を行うなど、散布される農薬への直接暴露さえ回避すればよしとする日本のポリネーター保護策など論外である。

 なお、これらの新研究については、近々『科学』(岩波書店)で紹介する予定である。
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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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