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青森 良くないと知りつつわらを焼く農家のジレンマ 

 農業情報研究所意見・論評・著書等紹介農業・農村・食料関係20191027日より転載

 今日の東奥日報紙(青森県)が、「短命県返上と言いながら」、健康被害を引き起こす「わら焼き」が放置されている青森県の実情を紹介している。

 記者は「稲わらの畜産利用などが進み、以前に比べると大幅に減ったわら焼きだが、今なお苦情が絶えないのはなぜか」と問う。「取材を進めると農家は一様に「良くない」と認識しつつ、高齢化、労働力不足などから利用に結びつけることができず、やむを得ず焼いている姿が浮かび上がった」という。

 【フカボリ】わら焼き 農家ジレンマ 東奥日報 19.10.27

  青森県は20106月、「青森県稲わらの有効利用の促進及び焼却防止に関する条例」を制定した。それは「農業者は、稲わらの有効利用の促進を妨げる焼却等の処分を行わないよう努めなければならない」(第3条)とし、この条例により「稲わらの焼却により発生する煙による健康や環境、道路交通などへの影響が解消され、県民にとって快適で暮らしやすい環境が形成されることや、本県を訪れる観光客へのイメージアップにつながることなどの効果を期待するものである」と謳う。

 これを受け、小生は当時、「農業に劇的変化起きるか 青森県の稲わら条例」なる一文を日本農業新聞に寄せ、「県は稲わらの有効利用を促進する施策を実施する責務を負い、施策の重点は、農業者による健康な土づくりの支援、稲わら等を資源として循環させる耕畜連携の強化、新エネルギー等としての活用などに置くという。大げさと言われるかもしれないが、戦後日本農業に画期的変化をもたらしたと後に言われるような成果を期待したい(78日付8 第3面 万象 点描)と書いた*。

 期待された成果は、どうやら上がっていないようだ。先の東奥日報紙によれば、「焼却に関し、現状で県条例に罰則規定はない。罰則を設ける必要性を指摘する声もあるが、廃棄物処理法で廃棄物の野焼きが原則禁止されているものの、農業を営むためにやむを得ない場合は、例外として認められる。これが、条例で罰則に踏み込めない理由にもなっているようだ」。

農家の高齢化と労働力不足が原因では「罰則」も無効だろう。必要なのは、農民の「仕事」(「労働」ではない)、農家の土作りに酬いる施策である。

 農業に劇的変化起きるか 青森県の稲わら条例

624日付の本紙でも紹介されたように、青森県議会が全国で初めてとなる「稲わらの有効利用の促進及び焼却防止に関する条例案」を全会一致で可決した。県は稲わらの有効利用を促進する施策を実施する責務を負い、施策の重点は、農業者による健康な土づくりの支援、稲わら等を資源として循環させる耕畜連携の強化、新エネルギー等としての活用などに置くという。大げさと言われるかもしれないが、戦後日本農業に画期的変化をもたらしたと後に言われるような成果を期待したい。

 盛岡市の近在に住み、「白老」と号した篤農家・藤原善一氏が記録した明治〜昭和のムラの生活誌によれば、わらは日常生活に「絶対に欠くことのできない重要な資材」であり、人々はわらで作られた産褥の上で「呱々の声」上げ、死ねば薪とわらで火葬されたように、生まれてから死ぬまで、わらに支えられて生活していた(『ムラの移り変わり』 日本経済評論社)。ところが、戦後のエネルギー・資材革命で、わらはこうしたすべての役割を奪われてしまった。時代の流れで、それも仕方のないことだが、そうは言っていられない役割もある。化学肥料の普及ですっかり端役に追いやられてしまった、たい厩肥源としての役割である。作物残滓を土に返さなくなれば土壌の有機物含有量が減少、作物生産を支える「健康な土」が失われる。これは、農業の長期的持続可能性にかかわる。

ヨーロッパの穀物収量がこの10年以上にわたって低迷している原因を解明したフランスの研究は、土壌有機物の余りの減少が土壌の肥沃度を損なっているという以外、説明がつかないと結論している。中国では黒竜江省等北東部の肥沃な黒土が、化学肥料の過剰使用や樹木伐採で急速に失われつつある。土壌の厚みはこの60年間に80㎝から30㎝に激減、土壌中の有機物濃度も1940年代の12%から2%にまで減った。日本では?国連食糧農業機関(FAO)が2008年に発表した「グローバル土地劣化・改善アセスメント」によると、日本の土地劣化度は世界173ヵ国中の30位である。従って、条例が「健康な土づくりの支援」を重点施策の第一に掲げるのは、まさに日本の現実にふさわしい。

ただ、新エネルギー源、特に自動車を走らせるための液体バイオ燃料(エタノール)の原料としての利用は注意を要する。2007年の国連報告は、農業残滓などを原料とするバイオ燃料について、このような残滓土壌や生態系の健康維持に必要であり、土壌劣化や収量減少を避けるためにはどれほどの残滓を残さねばならないか研究が必要だと警告している米国農務省の研究は、トウモロコシの茎は土壌浸食防止と土壌有機物レベルの維持のために畑に残さねばならず、土壌浸食の恐れのある畑で生産されたものはすべて畑に戻さなければならないとしている。エネルギー源としての利用には、このような慎重さが必要だ。

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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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