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政治家スキャンダルで息つく間もないテレビが見向きもしないたった13世帯の非暴力抵抗抗


川原は今 石木ダム用地明け渡し期限・上 <日常> 「奪われない」信じて 長崎新聞 19.11.14

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、家屋など物件を含まない土地が対象だった919日に続き、水没予定地の川原(こうばる)地区に暮らす反対住民13世帯の家屋を含む土地の明け渡し期限が今月18日に迫った。住民が立ち退かない場合、県は家屋の撤去や住民の排除などの行政代執行も選択肢から除外しない構えだ。重大な局面にある集落を訪ね、日常の断片を集めた。

 虚空蔵山から陽光が差し、川原に朝が来た。あちこちに「ダム反対」の看板が立つ谷あいの通学路を、ランドセルを背負った小学生たちが元気に歩いて行く。
 13世帯の中で、ダム本体の建設予定地に最も近い場所に住む岩下秀男(72)、久子(71)夫妻は、毎朝午前8時ごろに自宅を出る。向かう先は、ダム建設に伴い県が進める付け替え道路の工事現場。平日の午前中、住民や支援者ら2030人で現場に座り込み、抗議する。
 県が付け替え道路工事に着手した20103月から続く。当初は現場入り口前に陣取り、業者が入るのを阻止してきたが、県側が未明に資材や重機を搬入したため、座り込みも現場内に移った。それから2年以上がたつ。
 JR九州の運転士だった秀男は10年ほど前に退職。定年後の生活はダム反対運動が中心になった。趣味の植木に精を出したり、町外に住む子や孫の顔を見に行ったり、やりたいことはたくさんある。夫婦で「旅行に行きたいね」と話していたが、実現できないまま、定年後に取得したパスポートは期限切れになろうとしている。
 表向きは平穏だった10年弱。しかし付け替え道路の工事は着実に進み、土地収用法の手続きで今年9月、すみかの土地の所有権は奪われた。自分たちを「元地権者」と呼び始めた報道を見ると、やり場のない怒りが込み上げてくる。
 今月7日、県の幹部が突然現場を訪れ、話し合いに応じるよう住民らに呼び掛けて回った。「勝手に土地を奪っておいて『今後の生活を話し合おう』と言われても、応じられるわけない」とあきれる。思い返せば、いつも力ずくだった。「強制測量(1982年)も、事業認定申請(2009年)も、脅しさえすれば、こっちが屈すると思っている」。このまま強引に本体工事を進め、日当たりが自慢のわが家に、巨大な堰堤(えんてい)が影を落とす日が来るのだろうか。「『出て行かんあんたらが悪い』とでも言うみたいに」と不安そうにつぶやく。
 それでも、自分たちを「不幸」と哀れんだりはしない。「取りあえず元気に生きてるし、毎日仲間とも会えるから。今を幸せと思わなくちゃ」と久子は気丈に笑う。土地の所有権はなくなっても、この場所での平穏な暮らしは決して奪われることはないと信じている。

反対運動40年、迫る期限 石木ダム「県、やった者勝ち」 長崎・川棚 土地明け渡し 西日本新聞 19.9.17

 長崎県と佐世保市が同県川棚町で進める石木ダム事業の予定地で、住民らが20167月に現在の場所で始めた抗議の座り込みが計700日を超えた。国の事業採択から44年間動かなかったダム計画は、反対地権者の土地の一部の明け渡し期限が19日に迫り、一つの節目を迎える。所有権が国に移されたとしても、「ふるさとで住み続けたい」という住民の思いは土地に根付いている。「犠牲」を強いられようとする現場では、すでに日常と化した反対運動が続く。 (竹中謙輔、平山成美)

 里山の田畑を朝日が照らす。赤や青のゼッケンを着けた住民たちが、いつもの場所に向かう。胸には「石木ダム反対」「強制収用反対」の文字。ダム予定地、川棚町川原(こうばる)の岩下すみ子さん(70)は午前745分に家を出る。ダムに沈む県道の付け替え工事の現場で続く抗議の座り込み。住民が腰掛けるパイプ椅子の横を工事車両が砂ぼこりを上げて通る。今もこの地で、ダムに反対する13世帯が暮らす。

 岩下さんは13日、広げたノートに「700」と書き込んだ。昼すぎまで、住民や支援者約20人は日傘やサングラスで強い日差しに耐えた。「土日曜以外はほとんど毎日座る。こういう生活している人、おらんもんね」。終日座り込んだ日々もあった。股関節が痛むようになり、つえを突き、現場に続く未舗装の道を往復する。

 石木ダム事業は、水不足に悩む佐世保市の水道水源の確保と川棚川の治水を目的に県が計画。住民たちの座り込みは、県が道路工事に着手した10年に始まった。中断もあったが、工事は少しずつ進展。住民は場所を移しながら抗議を続けてきた。

 県収用委員会は今年5月、反対住民や地権者が所有する約12万平方メートルの明け渡しを命じる裁決を出した。期限は一部が19日、家屋を含む残りの土地が1118日と定められている。

     ◇

 座り込みの現場から約300メートル離れた県道沿いに小さな掘っ立て小屋がある。座り込みに参加できない松本マツさん(92)らはここで午前中を過ごし「反対」の意思を示す。

 1982年、県が機動隊を投入してダム予定地の測量に踏み切った「騒動」が頭から離れない。当時も座り込んだ住民は腕を抱えられ、次々に引っ張り出された。踏み付けられる人もいた。「機動隊員が次から次へと押し掛けてね。小高い山から木の棒で指示してた。恐ろしかった。あれは受けてみんと分からんよ」

 この強制測量を機に、住民と県の溝は決定的になった。知事が代わっても協議は平行線をたどった。2014年を最後に住民と顔を合わせなかった中村法道知事は、土地明け渡し期限の19日、面会に応じる。高齢を押して出席する予定の松本さんは「昔のことを知る年寄りが頑張って知事に訴えなね」と自身を鼓舞した。

 住民たちには、県が計画実行を前提に「明け渡し後」の生活再建の話を持ち出すのでは-という警戒もある。「土地収用法は地権者をいじめて土地を奪い取る法律。県はやった者勝ちの論理で進める」

 共に面会に臨む地権者岩本宏之さん(74)は1950年代後半から13年間、熊本、大分県境の下筌(しもうけ)・松原ダム建設反対運動を率いた故室原知幸さんの言葉を胸に刻む。「公共事業は、法に叶(かな)い、理に叶い、情に叶うものであれ」

 石木ダム建設は、利水というメリットを享受する佐世保市でも賛否が割れる。反対する市民団体は「住民を犠牲にした水を飲みたくはない」と訴え、朝長則男市長宛てに抗議文を出している。

<参考までに>

石木ダム 代執行か対話か 長崎県収用委「宅地明け渡し」裁決 長崎新聞 19.6.2


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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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