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常軌を逸した千葉地裁原発避難者訴訟判決 反原発気運高める効用も

 「国は東電に対し、津波による浸水から全交流電源喪失を回避する措置を講じるよう命じる規制権限を有していた。

全電源喪失をもたらす程度の地震と津波が発生する可能性、すなわち原発の敷地の高さ10メートルを超える津波が発生する可能性は、2002年に国の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」で、日本海溝寄りのどこでも発生する可能性があるとする知見が示された。

ところが、東日本震災以前の知見の下では、津波対策は地震対策に比べて早急に対応すべきリスクとしての優先度がなく、「長期評価」に異論もあった。津波対策を優先していると緊急性の高い地震対策が後手に回る恐れがあり、原告が主張ス06年までに事故後と同様の規制措置を講じる義務が一義的に導かれとはいえない。

仮に原告が主張を措置を取ったとしても、時間的に間に合わないか、事故を回避できなかった可能性もある。国の規制権限の不行使は著しく合理性を欠くとは認められず、違法とはいえない」

昨日の千葉地裁原発避難者訴訟判決の核心部分である。全電源喪失をもたらすほどの津波は予見できたと認めながら、これに対する対策を怠った国を免責する。福島第一原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人は、津波による事故を予見するのは不可能であったと無罪を主張した。前橋避難者訴訟でも、国や東電は「長期評価は科学的知見として確立していなかった」、「巨大津波は予見できなかった」などと自らの責任を否認した。

それを考えれば、この判決は常人には予見不能なものだった。「旧ソ連のチェルノブイリ原発事故など過去にも重大な原発事故は発生している。国と東電は原発事故の影響を想定できたはずだ。津波を予見できたと判断したのなら、万全の対策を取る責任を求めるのが筋ではないか」(原発千葉訴訟 過失なしは筋が通らぬ 信濃毎日新聞 17.9.23)。それが常人の考えだ。

とはいえ、「津波を予見できても、万全の対策を尽くさないことを許容する」(「来月10日判決 福島弁護団も批判」 東京新聞 17.9.23 27面)この常軌を逸する判決に、国や東電も胸をなでおろしているわけにはいかない。

「裁判官がこんな論理を使って、全国各地の原発の再稼働を認めていったらたまらない」(原発・千葉訴訟論理が後退している 東京新聞 17.9.2)。福島第一原発事故後に芽生えた国や原発企業の「安全文化」は完全に事故前に後戻り、原発は安全という国の主張も誰も信用できなくなる。

原発は国策で進められてきたのであって、安全確保には事業者だけでなく、国も重大な責任を負う。それが多くの国民の認識であり、立地自治体の受け入れのよりどころにもなってきたはずだ。
 千葉地裁判決のような責任の程度であれば、立地自治体や周辺自治体の住民は安心して暮らすことができなくなる。国際原子力機関(IAEA)が事故に関する報告書で、東電は対策を怠り、国も迅速な対応をしなかった、と総括したこととも矛盾する」(【原発訴訟判決】安全のよりどころ揺らぐ 高知新聞 17.9.23)。

反原発、脱原発の気運も一挙に高まる可能性がある。これが常軌を逸した判決の、裁判官も予想できなかった効用だ。

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Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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