記事一覧

復興相 福島農業再興へ「風評払拭」に全力 再興を阻む元凶は「風評」ではない―再論

農業情報研究所 2017218日より

 今日の日本農業新聞紙上で、今村雅弘復興相が「東日本大震災からの福島農業の再興へ大きな課題になっている『風評被害』の払拭に全力を挙げる」と力説している。「福島産品は、放射性物質検査で安全性が担保されている。・・・福島産米は、全袋検査で基準値を超す事例は一切出ていない」にもかかわらず、「福島産品の価格が震災前の水準に戻っていない」と強調する。

 流通調査し風評払拭 福島農業の再建 今村雅弘復興相に聞く 日本農業新聞 17.2.18

 福島農業再興のために「風評払拭」に全力を上げるというのがいかに的外れであるかについては既に述べたところだ(福島の農林水産業 「風評」という言葉が再生を阻む 国もマスコミも、なぜ本当の問題を考えないのか 農業情報研究所 16.12.23)。今の政府には何を言っても無駄とは思うが、ただひとつ、復興相が言う「福島産品の価格が震災前の水準に戻っていない」という「予断」(「予断」を持つことなくというのは安倍首相が得意とする文句である。ただ、意味はよく分らないが)について質しておきたい。

 下の図は、福島第一原発事故前から現在までの福島産米相対取引価格の推移を示したものである(データ出所:農水省)。

 福島県産米の価格は全国全銘柄の価格の変化と歩をそろえて変化、14年産が大きく落ち込んだあと、15年産、16年産と続いて上向いている。16年産米は10年産を上回っている。少なくとも「福島産品の価格が震災前の水準に戻っていない」などとは「予断できない」ということである。

 前にも述べたように、福島県の米産出額は2010年の791億円から15年には563億円に大きく減っている。しかし、これは米価が下がったためというより、米作付面積が8600㌶から64200㌶に減少したためだ。それは放射能汚染(周辺森林や湿地を含めて)で農地が元に戻らず、避難した農業者も戻ら(れ)ないからだ。価格が戻らないためではない。

 復興相、「人々が被災地に戻るには、なりわいの再興が不可欠。これは時間との勝負で、避難生活が長引くほど帰還は困難になる。被災地の主産業である農業の復興を重視するのはこのためだ」とも言っているそうである。話は逆である。人々が戻らないのは、依然として残る放射能汚染と何時再発するかもしれない原発事故の脅威があるからだ。「なりわいの再興」がないから人々が戻らないのではない、人々が戻ら(れ)ないからなりわいの再興もできないのである。

 この春、政府は富岡町・浪江町・飯舘村の帰還困難区域を除く区域と川俣町山木屋地区に対する避難指示を解除する。しかし、大部分の元住民は戻らない(帰還困難区域「復興拠点」は地域再生のためでなく予算で決まる 避難指示解除は住民ではなく国のため 農業情報研究所 17.2.6)。既に避難指示が解除された楢葉町などでも、住民帰還をほとんど進んでいない(<避難解除1年>癒えぬ後遺症 楢葉帰還9% 河北新報 16.9.5)。

 参考図

 

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

月別アーカイブ

フリーエリア

フリーエリア

フリーエリア