EU 放し飼い卵の販売規則を改定 鳥インフルリスクの長期化で
- 2017/11/23
- 16:31
ここに紹介するのは、動物福祉(AW、Animal Welfare)への関心が薄く、それを満たせば製品が高く売れる動物福祉基準も存在しない今の日本には無関係な話である。ただし、「5~10年先を見据えて国内合意を形成し、EUや米国に対抗できる畜産物AW食品基準を作成できれば、輸出入を通じた混乱や競争劣位を避けられるだけでなく、チャンスにも変えられよう」(平飼い卵を中心とした鶏卵販売動向の研究 アニマルウェルフェア対応の可能性 麻布大学 獣医学部 動物応用科学科 教授 大木 茂)という話もあるから、先を見ればまんざら無益な話でもないだろう。
EUは2008年以来、鳥インフルエンザ流行期(渡り鳥からの感染リスクが高い時期)には家禽を最大12週間屋内に閉じ込めてもフリーレンジエッグ(放し飼いの家禽の卵)として販売することを認めてきた。しかし、2016年はリスク期間が長引き、多くの家禽群を12週間以上屋外に出すことができなかった。そのために、これらの群れの卵は高価で売れるはずのフリーレンジエッグとして売ることができず、養禽農家は多大な損害を被った。
鳥インフルエンザの流行は今後もっと長引く恐れもあり、農家が被る損害を減らすには屋内に閉じ込める例外措置が許される期間を引き延ばす必要がある。そこで、今季の鳥インフルエンザ流行に備え、今年(2015年)11月15日からこの期間を16週間に延ばすことにした。さらに、この例外規定は、地域や農場ではなく、“flocks”(群れ)ごとに適用されるから、被害を地域・農場全体ではなく個々の群れにとどめることもできる。そういう話である。
New rules extend marketing standards for free range eggs hit by avian flu restrictions European Commission,17.11.22
鳥インフルエンザ対策として2-3センチの隙間もない密閉鶏舎に閉じ込める養鶏方式しか知らない日本では信じられないかも知れないが(鳥インフルエンザ 野鳥だけでなく小動物からも感染の可能性 これが「新」発見では養鶏農家も浮かばれない 評日日 17.2.2)、EUの3億9000万の雌鶏のうち5400万羽(14%)がフリーレンジで飼われており、この比率はイギリスで53%、アイルランドで40%、オーストリアで21%、フランス・ドイツで18%、オランダで15%なるという。
動物虐待工場畜産しか知らない日本、いつか「EUや米国に対抗できる畜産物AW食品基準を作成」し、「輸出入を通じた混乱や競争劣位を避けられるだけでなく、チャンスにも変えられ」る日は来るのだろうか。