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農水省福島産農水産物流通実態調査 販売不振と価格低迷の主因は「風評」ではない

農業情報研究所2018329日より転載

 農林水産省が福島県産農産物等の生産・流通・販売段階の実態調査結果を発表した。調査は福島県産農産物等の販売不振の実態と要因を明らかにするため平成29年度に初めて実施したものだ。調査結果については平成29年度福島県産農産物等流通実態調査報告書(概要版平成29年度福島県産農産物等流通実態調査報告書概要)を参照されたいが、報道機関のまとめ方が面白い。

 福島民友は「他県産で需要を賄える品目については本県産を積極的に扱う理由を見いだせないのが現状で、依然として県産品の価格は震災前の水準まで回復していない状況が浮かんだ」(福島県産品「価格」回復せず 流通調査、「買いたたき」未確認 福島民友 18.3.28)と、事実を淡々と述べるに対し、福島民報は「風評が根強く残るだけでなく、他県産に取り扱いを変えた事業者が本県産に戻す動きが鈍い現状が浮き彫り」になったと、福島県産の販売不振と価格低迷が「風評」のせいに帰そうとする意図がありありだ(仲卸3割「県産扱い減」 首都圏で風評根強く 福島民報 18.3.29)。

 しかし、例えば、

「・米では8割程度、牛乳・りんごでは6割程度の消費者が購入する産地を決めているが、その他の品目は約5割以上の消費者が購入する産地を決めていない。

・ 「他産地品より価格が高くても購入する」「他産地品と価格が同等であれば購入する」との回答が12割程度存在した。

・「他産地品より価格が安ければ購入する」「福島県産のみしか取扱いがなければ購入する」との回答が、米で4割程度、他の品目で2~3割程度存在した。

・ さらに「福島県産しか取り扱っていなければ購入しない」との回答が1割程度存在した」という消費者アンケート調査結果からは、

消費者が福島県産は「危ない」という根も葉もない噂=「風評」に惑わされて同県産品の購入をしないのが福島産品販売不振の主因であると確認するのは難しい。この調査結果は、むしろ「厳しい検査体制が構築され、安全性が確立された今、『福島は危ない』という人はごく一部にすぎない。ではなぜいまだに価格が安いかと言えば、原発事故を境に流通構造が変わって今も戻らないためだ、全国から仕入れる業者にとって、福島は『低位の産地』という位置付けで固定化してしまった。6年もたてば、原発事故前に福島が築いていた産地としての地位をそもそも知らない業者もいる。こうなるともはや風評の問題ではない」という福島大学教授・小山良太氏の所説を裏付け、補強するものであろう。

福島農業の復興のためには、国も県も、小山教授が指摘するような福島農業が抱える目下の「本当の問題」に向き合わねばならない(福島大学研究者 「県産農産物が直面している問題はもはや風評被害ではない」 産地戦略が急務 農業情報研究所 17.3.4)。マスコミも、「風評被害」の言葉で「本当の問題」を考えるのをやめてしまった福島第一原発事故後に定着してしまった風習と決別する時期ではないか(福島の農林水産業 「風評」という言葉が再生を阻む 国もマスコミも、なぜ本当の問題を考えないのか 農業情報研究 16.12.23)。 「風評被害」に拘り続けるのは復興が遅らせるだけだある。

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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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