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「絶望死」が増加する米国社会の闇 若者取り巻く日本社会も真っ暗闇(17/4/4改訂増補)


ロイター通信が本日付で、米国における「絶望死」の増加について伝えている


 コラム:「絶望死」が増加する米国社会の暗い闇 ロイター 17.4.2 


ドラッグ、アルコール、そして自殺が主因となって米国の国民、特に白人で低学歴層の平均寿命が以前よりも短くなっている。米国社会の最底辺では特に状況が深刻だ。 

 「学歴が高卒以下の人々の死亡率は、あらゆる年代で、全国平均の少なくとも2倍以上のペースで上昇している。また、低学歴の米国民のあいだでは、「健康状態が良くない」と回答する人が、以前に比べて、またより大きな成功を収めた米国民に比べて、はるかに多くなっている」。

 単に経済云々(「でんでん」ではありません。念のため)でなかろう。米国経済は成長しているし、失業や脱工業化は他の先進国にも共通する問題だが、そこでは「絶望による死」は増加していないからだ。米国に独特の何か重大な問題が進行しているに違いないという。

 記事は、不十分な福祉制度、医療制度の混乱、米国民の国民性―異常なほどに強い自己破壊欲―が相互作用しているのではないかと言う。

 そして、この国民性の起源を、「家庭や共同体、既成宗教により提供されてきた伝統的な指針が排除されたことに基づく、きわめて現代的な孤独」(デュルケムの「自殺論」)に求める。デュルケムはこれを「アノミー(無規範状態)」と呼び、政治分野の識者は「疎外」、文化分野の批評家は「幻滅」と呼ぶ。

 記事は、「アノミーや疎外、共同体の喪失が、現代のどの場所よりも米国に大きなダメージを与えつつあることは理解できる。厳格な個人主義を常に尊重してきた国においてこそ、孤独は容易に到来するからだ。

また、米国民のなかでも、非熟練労働が社会的に低く評価されるせいで最も疎外感を感じている人々に最も大きなダメージが生じているというのも筋が通っている。家族の分断が進むなかで、またかつてはこれも先進国中で米国の独自路線の好例であった敬虔(けいけん)な信仰が衰退するなかで、このグループの経済的な苦痛は倍加している」。

そして、「この国で政治的な対応が遅れている理由も、・・・同じ国家的欠点によって説明できる。政府に対する本能的な不信感や、一枚岩の医療アプローチの欠如、国家的な失敗を認めることへの消極性、これらすべてが思い切った政策を妨げている」と分析する。 


そこで一つの疑問がわく。「アノミーや疎外、共同体の喪失が、現代のどの場所よりも米国に大きなダメージを与えつつある」のは確かとしても、「アノミーや疎外、共同体の喪失」は「現代のどこでも」進行しているのも確かではないか。米国以外の先進国では「絶望による死」は増加していないというのは本当なのか。

The Econimist誌によると、「オーストラリアや英国、カナダ、アイルランドなど他の英語圏諸国でも絶望死は増えたが、米国ほどではない」という(米国の白人中年、高死亡率の理由 日本経済新聞 17.3.29)。

ちなみに、これらの国を含むOECD加盟のいくつかの国の自殺率の推移を見てみよう。これは「絶望自殺率」を示すわけではないが、2000年以降自殺率が上昇が目立つのは、自殺率OECDNo.1の韓国を除けば米国だけである。ただし、その米国の自殺率も、なおフランスより低く、韓国、そして今世紀にOECD一の汚名を返上した日本(韓国、リトアニアに続き第3位)よりはるかに低い。



そして、少なくと今世紀に入っての韓国の自殺率急上昇が米国流の「絶望死」の増加に関連していることは、金昌民ソウル大学教授の『中央日報』への次の寄稿から明らかだ。

「韓国の2010年度の自殺率が世界1位、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2.6倍という。1年に1万5566人が自ら命を絶つ。この5年間に他の国では自殺が減っているのに韓国だけ増えた。最近では口にすることさえいやな性犯罪事件のニュースが相次ぐ。

 社会が崩れている。人間性が喪失され、家庭が破壊されている。ところが為政者は経済指標にだけ埋没している。自殺事件が問題になるたびに政府とメディアは個人にその責任を転嫁する。いつもうつ病が、社会に対する理由のない怒りが問題という。そのうつ病と怒りの原因を提供した社会に対しては話さない。経済奇跡を成し遂げまもなく先進国に入るというのに国民はますます生きづらくなる。中産層はますます減り貧困層が増えている。

 ますます物質万能の風潮は増している。世界のどの国よりブランド品が高く売れている。政府、企業、学校、家庭の別なくみんなが「競争力」を口にする。競争で勝ってさらに多くを所有しようという声だ。ドラマと広告は瞬間ごとに黄金万能の風潮を助長する。しかし現実では貧富の格差はますます激しくなり、相対的剥奪感はますます大きくなっている。ますます勝者は少数に狭まっている。その競争で負けた敗者はお金以外の人生の価値と意味がわからないので残ったものは自殺だけだ。ついに7年連続で自殺率金メダルの国になった」(農業情報研究所 FTA大国は自殺率世界一 韓国は「人間性を喪失した経済大国」であってはならない 金昌民ソウル大学教授(今日の話題 2012913日)。  


日本についてはどうか。日本の自殺率が低下傾向にあることは確かだろう。ただし、武蔵野大学・杏林大学兼任講師の舞田敏彦氏によれば、「絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産しているPRESIDENT Onlien 2016112日)。15-24歳の若者の自殺率は日本が韓国を上回って上昇している。それがこの世代の「絶望死」の増加によるものであることも、氏の説明から明らかだ。



「日本の若者の自殺率は、この20年間でトップにのしあがっています。欧米諸国は減少傾向にあるのに対し、日本はその逆だからです。お隣の韓国も、似たような傾向を呈しています」。

「大学生の就職失敗自殺、雇用の非正規化、果ては若者を使いつぶすブラック企業の増殖など、上記のデータを解釈する材料は数多くあります。

ちなみに2014年の20代の自殺原因上位3位は、うつ病、統合失調症、仕事疲れ、となっています(警察庁『2014年中における自殺の状況』)。いずれも、将来展望閉塞や過重労働の蔓延といった社会状況と無関係ではないと思われます。

それは多かれ少なかれ他の年齢層も同じですが、今世紀になって自殺率が上がっているのは若年層だけです」。


韓国同様、FTAという似非自由貿易(新自由主義)で経済最優先の米国型競争社会を追尾した結果である。若者たち、そんな競争社会から逃れようと田舎に逃避したとしても、そこでも行先の宛もない「トレッドミル」を踏み続けねばならない(構造改革のトレッドミルを走り続けるスイス小農民 財政的・精神的破綻で1980年の半分に)。

韓国や日本は「先進国」でないというなら話はべつだが「アノミーや疎外、共同体の喪失」がもたらす「絶望死」が増加している先進国は米国だけではない。アベノミクスが続くかぎり、日本でも「絶望死」が増え続けるに違いない。それはトランプに待つまでもなく、日本社会の米国化・韓国化を加速するばかりである。安倍は既に、トランプを超えている。


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Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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