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愛知農試 いもち病に強いブランド米改良種開発 地方農試の面目躍如 それでも種子法廃止か

農業情報研究所 20174月4日より転載

 愛知県農業総合試験場山間農業研究所が三河地方の山間地で栽培が盛んなブランド米「ミネアサヒ」を病気に強く改良した新品種「中部138号」を開発した。

 同じく県が1980年に開発したミネアサヒは、豊田、岡崎、新城市、設楽町、豊根村などの山間地を中心に、県内の1500ヘクタールで栽培され、県内では「あいちのかおり」「コシヒカリ」に次ぐ生産規模を誇る。

 甘みの強さや、もちもちとした食感が特徴だが、稲の大敵「いもち病」(カビ)に弱い。収量を保つためには、田植え時や発病時などに農薬を散布する必要があり、10アールあたり4000千円程度の費用がかかる。

 研究所は、農家の要望を受け、2006年に品種改良に着手。ミネアサヒといもち病やウイルス病「縞葉枯(しまはがれ)病」への抵抗力が強い別品種を交配、その後親品種であるミネアサヒと交配させて食味を戻す「戻し交配」を4回繰り返し、中部138号を完成した。

 試験栽培によると、いもち病の発生率はミネアサヒの48%に対し、138号は1.8%にとどまった。食味も、県農業試験場や農協、生産者団体の関係者ら二百人以上が試食して、旧来と差がないことを確かめたという。 

 ミネアサヒを改良 県研究所が減農薬へ新品種「中部138号」開発(愛知) 中日新聞 17.4.4 

 耐冷性・耐病性が優れた稲は収量が劣る、苦労して冷害やいもち病に強い多収品種の開発に成功しても、食味が悪い(大方の日本人の口に合わない)、食味が良いものは寒さや病気に弱く、収量も低い。そんな稲育種が負った宿命を克服しようと、血の滲むような努力を続け、数多の優良品種を生み出してきたのが都道府県農業試験場である。そういう優良品種がまた一つ増えた。都道府県農試の面目躍如といったところだ。 

 とこが農水省は今国会で、このような育種を支えてきた「主要農産物種子法」(昭和27年)を廃止するという。理由は不明だ。恐らくは、「地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農産物種子法は廃止する」、戦略物資である種子・種苗については「国は国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する」などという規制改革推進会議農業ワーキンググループ(WG)の意味不明な議論(2016106日)を受けたものだろう。

 事実は、「地方公共団体中心のシステム」が「民間の開発意欲を阻害」しているわけでも、国の種子・種苗「開発・供給体制」を毀損しているわけでも決してない。種子法廃止で国の種子・種苗開発・供給体制は弱体化する恐れこそあれ、決して強化されることはない。

 それでも種子法は今の国会では間違いなく廃止されるだろう。しかし、これは私の願望をも込めた思い込みかもしれないが、地方農試とその研究者たちの品種改良への情熱が種子法廃止くらいで萎えてしまうとも思えない。 

 名著『コシヒカリ物語』(中公新書 1997年)の著者・酒井義昭氏も、「最近でこそ民間企業が新品種開発による経済的メリットを求めて水稲関連の種子産業に進出しているものの、これまでのわが国の水稲品種の育成は、ほとんど国や都道府県の試験研究機関が担当してきた。これら試験研究機関の育種家たちは、78年の種苗法に基づく品種登録制度の発足まで、いくら優秀な品種を開発したからと行って、一銭の金銭的メリットを手にしたわけではなく、黙々と地道に苦労の多い育種事業に取り組んできたのであった」(同 はじめに ⅲ頁)と言っている。

 

 育種家にとって、経済的利益を求めるばかりの民間企業ではなく、地域のためによりよき品種を生み出そうと懸命に開発競争を続ける各地農業試験所ほど魅力的な働き場はない、とも思いたい。地方公共団体、農試研究者、農家・国民のために挫けるな、そう叫びたいのである


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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務

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