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安倍政権の農業・農村改革 何のため、誰のため?

農業情報研究所>18721日より転載

安倍首相が日本農業新聞の単独インタビューで、農業・農政改革について久々に弁を振るっています(安倍首相本紙単独インタビュー 農政改革に現場の声 農協総合事業を評価 所得向上取り組み重視 日本農業新聞 18.7.20)。能弁だけれど中身は空っぽ、読者は彼の農業・農政改革論の空しさを改めて確認したことでしょう。というのも、何のため、誰のための農業・農政改革なのか、相変わらず全く不明だからです。

 第二次大戦後のフランスは廃墟の中で国家・経済の再建に取り組まねばならなかった。そのためには世界市場で対決できるアメリカ並みの工業を建設せねばならない。農業に与えられた使命は、農村に滞留していた労働力を工業発展のために解放し、食料の国内・輸出需要を満たし、生産費と価格を引き下げ、フランス人の生活水準の向上のために生産を発展させることであった(一九四五年、モネ・プラン)。

価格政策による農民・農村人口の維持を主張する多数派農民組合運動を蹴散らかし、農山村地域の人口が空っぽになるほどのドラスチックなド・ゴール派の農業・農政改革(農業近代化)は、このような大義名分に基づくものであった。農民ではない、国家・経済再建、国民食料の安定確保のための農業・農政改革であった。

 このような農業近代化がもたらした農業人口減少は、次第に農村空間の有効利用と管理を困難にするようになる。山地の多くの農地が荒地と化した。七〇年代初期、山岳地域の自然環境と土壌の保全のために農業人口を維持しようとする山地特別補償金(ISM)や青年農業者自立援助金(DJA)が創設されるが、これは時とともに一部地域に限られない問題となる。多くの農村空間が「砂漠化」に追いやられると恐れられる事態となった。農業による環境破壊も市民の受け入れがたいものとなった。近代化はフランスの伝統的な農村景観を破壊し、水質を汚染し、湿地等の農地化は生物多様性を奪い、生態系に深刻な影響を与えるようになる。

  こうして80年代以降のフランス、ヨーロッパの農業政策の目標は、次第に「生産」から雇用維持・自然資源保全・食料の品質の改善、農業者の多面的機能の助長に軸を移すようになる。農業・農政改革は、農民のため、市民、環境のための改革に変わった。(以上、農業成長産業化という妄想――「安倍農政」が「ヨーロッパ型」農業から学ぶべきこ<北林寿信>  世界 20169月号参照)

 ところで、安倍政権の農業・農政改革は何のため、誰のためのものなのか。

 TPPや日欧EPAで関税保護を平然と取り払う通商政策からは食料安定確保・食料安全保障という目標は放擲しているとしか思えない。

米の生産コストの4割削減という目標を掲げ、農地集積による大規模化を強要するやり方は、農村を空っぽにしてしまったかつてのフランスの「近代化」を彷彿させる。米の生産コストの4割削減という目標を達成するには、現在の100万ほどの経営体数を10万ほどに減らさねばならず、9割の農家が米作りから撤退しなければならない。こんな目標が実現した暁には、農家・農民あってこその農村社会が崩壊してしまうだろう。農業(者)の持つ多面的機能の維持も不可能になる。農家・農民・農村・環境のための改革でないことも明白だ。

だとすれば、何のため、誰のための改革なのか。国家安全保障、国民の命を守ること?食料安全保障も放擲して、何でそんなことが言えるのか!

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プロフィール

Author:寿
農業情報研究所(WAPIC)=http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/の所長・所員・小使いを兼務。原発事故で「明るい農業・農村」の夢を失った老い先短い老人です。かつての行動派も病魔のために身体不如意、情報提供と批評に徹します。

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